北朝鮮の平壌(ピョンヤン)で9月17日に開催された初めての日朝首脳会談。戦後半世紀以上も閉ざされたままの“重い扉”がようやく開き始めた。まさに歴史的会談だった。
それにしても、金正日(キムジョンイル)総書記が明かした日本人拉致事件の安否調査報告は大衝撃だった。「8人死亡 生存5人」―北朝鮮政府は初めて「拉致」を認めた。そして金総書記は小泉首相に「誠に忌まわしい事件だった。遺憾であり、率直にお詫びする」と謝罪し、再発防止と関係者の処罰を表明した。一方、小泉首相は強く抗議、記者会見では「痛恨の極み、ご家族の気持ちを思うと、言うべき言葉もない」と鎮痛だった。
しかし、双方が署名し合った「平壌宣言」には「拉致」という文字は見当たらない。「お詫び」の文字は日本の「過去の植民地支配」の項だけだった。また、北朝鮮の放送、新聞は拉致事件の調査結果や金総書記の謝罪については全く触れなかった。
このことが多くの日本国民の不満を募らせ、北朝鮮への不信感を一そうかきたてた。北朝鮮政府はこれまで、頑なに拉致の存在を否定してきた。徹底した報道管制。言論の自由はない。国民には具合の悪いことは知らせない。従って、今回も「恥部」を国民の前にさらけ出せなかったのである。こんな“身勝手”が、開かれた国際社会に通用するだろうか。
ミサイル発射の無期限凍結、核についての国際合意順守、北東アジアの平和と安定の維持…。「平壌宣言」には前向きな文言が並んだ。
小泉首相は「日朝関係の改善や諸問題の包括的促進のために交渉再開を決意した」と語った。金総書記は北朝鮮の“変革”をしきりに印象づけようとした。
だが、北朝鮮は本当に「独裁・軍事国家」を返上、ロータリークラブも存在できる「普通の国」に再生するのだろうか。“金ほしさ”の芝居だったなら絶対に許せぬ“悪”である。その正体がはっきりするのが10月に再開される国交正常化交渉である。