福島ロータリークラブ≪例会≫
例会日:平成13年9月13日(木) 12:30〜 
例会場:ホテル辰巳屋8F 
ゲストスピーチ 桜の聖母短期大学専任講師 二瓶由美子 さま 
「未来」
―ジェンダーを考える―
1.はじめに

 皆さんご存知のように1999年6月、男女共同参画社会基本法が制定・施行されました。基本法には、教育基本法や環境基本法、障害者基本法などがあり、通常の立法とは異なり、それぞれの分野での法や政策のあり方全般に対し、骨子となるべき考え方や基本理念を宣言するものです。つまり、それぞれの分野の法や施策を統合するのが目的である「法」といえます。今後、男女共同参画社会をつくっていくために、さまざまな法整備や施策が行われるための基礎ができたわけです。男女共同参画は21世紀の最重要課題ということを明らかに宣言したという意味もあります。

 男女共同参画がなぜ21世紀の最重要課題なのかは、さまざまな報道で周知のことだと思います。私自身はいくつかの理由があってのことと考えています。たとえば「世界の人的資源の半分は女性であるが、女性の能力はまだ十分に開発されていない」という人間開発の視点。そして「高齢社会は老女社会でもある。女性が長い人生を想定して、若いうちからあらゆる面で自立していることが必要だ」という女性のライフサイクル説。また「性別役割分業に基づく専業主婦の子育てプレッシャーが子ども達を追いつめたのではないか」という教育の荒廃についての原因説。いろいろな理由が考えられます。

 これほどまでに待ち望まれている「男女共同参画社会」、しかし、その歩みは遅々としてもどかしいこともまた事実です。なぜでしょうか。その原因が今日お話しするジェンダーなのです。

2.ジェンダーという概念の成立

 産む性であるがゆえに歴史の中で差別を受け続けた女性が、選挙権などの権利を獲得することができたのが、19世紀末から20世紀にかけての第一波フェミニズムの成果です。にもかかわらず、女性への差別はなくならなかった。「なぜか?」という問いに答えを出したのが、1960年代からの第二波フェミニズムです。産む性であるかどうかという生物学的性差によって、「男らしさ」や「女らしさ」が決定されるものなのか。生物学的要因が女性の役割や男性の役割を決定することは本当に自明のことなのか。答えは否でした。性別に関する社会的な問題の多くは、社会的・文化的要因によるものだとわかったのです。生物学的性差に付与された知、それがジェンダーです。ジェンダーは変更可能な概念なのです。

 子どもを産むことは女性にしかできません(いまのところは)。でも、育てるのは女性だけにしかできないわけではありません。母乳は子育てのほんの一時期だけ必要なものです。ミルクや離乳食、まして通常の食事作りは誰でもできます。出産役割をもつことで、育児・教育までを女性の役割と考えることに根拠はないのです。よく、「でも、重い荷物は男性でなければ…」ということをおっしゃる方がいます。これも、現代では「機械」が助けてくれます。科学技術の進歩は体格や体力より、知識や知的能力を必要とする仕事を拡大させました。それに、人間の能力も体力も、男女で二分されるものではなく、個人差の問題だということは、いまや誰でも知っていることです。

 大切なことは、「男は力持ち」という固定観念が、力持ちではない男性を苦しめることに気付くことなのです。

3.ジェンダーにひそむ問題

 ジェンダーに基づく性役割は、ときとして、個人の自由な自己実現の機会を奪います。これは、女性も男性も同じです。ジェンダーから自由になれたら、人はもっと伸びやかに生きられるでしょう。

 ここで、ジェンダーを少し学習しましょう。ジェンダー(社会的・文化的性差)は、三つの問題を内在させています。一つは「フェミニズム問題」です。社会に目を向けてください。男性の役割とされてきたものは、一般的に社会的地位や高収入に結びつきやすいものが多いのではないでしょうか。これが、男女の権力関係に影を落とします。ドメスティックバイオレンスやセクシャルハラスメントの温床になることは容易に想像できますね。

 次に考えたいのが、ジェンダー問題です。人間のほとんどの能力は性別に起因するのではなく、個人差の問題であるから、性別による役割分担は個人の能力の発揮を阻害することがあります。

 最後にあげておきたいのは、コンテクスト問題です。人はいつ、どんなときに、男性であるとか、女性であるとかを意識するのかという問題です。「男とはそういうもの」と男性の性衝動を容認するようなジェンダーが「キャンパスセクハラ」や「少女売春」を生み出しているのではないでしょうか。「人間であること」それだけで十分な場において「性」を意識することが、男女共同参画の壁になっています。

4.ジェンダーに起因する生き難さ

 みなさんは「女だから」「男だから」ということで、制限や制約を受けた経験はないでしょうか。「男の子は四年制大学、女の子には高等教育はいらない」と、進学できなかったという女性は私たちの年代ではまだまだいました。いまだに残されていることも耳にします。職場における研修や昇格機会も、女性であるがゆえに少ないということもあります。男性は「男だから泣くな」「男だから強くなければいけない」と、重圧感を持って生きた経験がありませんか。これまで自分自身を制約してきたものの正体がジェンダーだと気付くことで、あらためて、どう生きるかを考えるきっかけにしてください。

5.自分らしく生きること

 平成11年度に福島県は男女共同参画に関する意識調査をしました。プランに生かすためです。その結果に興味深い変化があります。「『男は男らしく、女は女らしく』という言葉からどういう感じを受けますか」という質問に対して、平成4年の調査では全体で71.7%の人が「そのとおりである」と答えています。しかし、今回の結果では「同感する方である」とする人が全体で67.1%となっているものの、男女で分けると、女性は57.6%にすぎません。また、20代の人は44.9%、30代で50.4%と、若い人ほど「ジェンダーフリー」であることがわかりました。

 時代は変わりつつあります。男女で二分するより、それぞれの個性を尊重した方がずっと生きやすいことは誰しもわかっていることです。「自分らしく生きること」を大切にしたいものです。


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