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日本銀行の森川です。私どもの商品(お札)につきましては、日ごろ格別のご愛顧をいただきありがとうございます。おそらく、最も消費者高感度の高い商品ではないかと思います。
さて、本日は新入会員スピーチということなんですが、皆さんとはもう既に何度もお目にかかっておりまして、極端にフレッシュさに欠けるトウの立った新入会員スピーチになってしまいました。
今日は「支店長会議を終えて」も含めてスピーチしなさいということです。支店長会議につきましては、もう1ヵ月も前の話になりますので、かなり旧聞に属しますが、各支店長の報告は「さらに悪化している」一色で、全体としてきわめて厳しいものでした。その後1ヵ月が経ちましたが、各種統計に表れる数字や私どもの調査活動から見る限り、景気は悪いまま横這いといった状況です。
県内経済の現状につきましては、私どもより皆さんの方が日々強く感じておられるかもしれませんが、一言で言いますと全国同様、あるいは全国以上に「非常に厳しい状況」が続いております。
福島県の特徴は、製造業を中心に行状判断DIが全国に比べかなり悪いこと、そして、雇用関係の指標が全国に比べて著しく悪いことです。これは、福島県は産業構造の中で電気機械産業のウエートが高い(製造業に支援る電気機械の割合36%〈全国19%〉)ことから、いわゆる「IT不況」「産業の空洞化」=すなわち、工場の中国移転の影響を強く受けているためだと考えられます。ちなみに12月の日銀短観の数字を見ますと、県内企業の業況判断DI(全産業)は、全国が▲40に対して福島は▲51となっています(これは、私どもの33支店の中では下から2番目です)。また、12月の福島県の有効求人倍率は0.40倍と、全国平均0.51倍を大きく下回っており、全国47の都道府県のうち下から数えて7番目の悪さです。全国で見ると、今回の求人倍率の低下は求職者の増加によるところが多いのですが、福島の場合は、求職者の増加もさることながら、求人に出てこないことの影響が大きいように思います。新規求人数は、全国で見ると下がったとはいえ、水準はまた相応に高い(ですから求人・求職のミスマッチ)のですが、福島の場合は、新規求人のレベルが非常に低い(ミスマッチではなく、そもそも求人がない)といえます。鉱工業生産指数や景気動向指数などのほかの指標を見ても、全国を下回る指標が多く、景気を全国と比較すると「平均より下」という印象です。
このように景気は全体としては昨年秋に比べればさらに悪化しているのですが、10〜12月の実質ベース輸出入の数字や生産の数字にはようやく減少テンポが鈍化する兆しが出てきました。在庫調整についても、IT・電子部品関係はまもなく完了、鉄や紙についてもかなり進んできたことが数字の上でもはっきりと捉えられるようになってきました。
こうした動きを反映して、県内企業でも自動車部品やIT関係部品などで受注の増加等を受けて減産を緩和する動きが見られています。また円安の効果も、海外からの受注の増加や円の段取りが増えることによる収益の改善といった形で、じわじわと表に出てきています。このように、景気循環という面では、そろそろ景気の底が視野に入ってきた、あるいは、景気の悪化にようやく「緩い」−ここはかなり強いヘッジが必要ですが−ブレーキはかかり始めたといえう現象が出てきました。
以上が景気の話ですが、本日は2千円札のPRをさせていただきたいと思います。
去年から今年にかけて偽造銀行券=偽札の使用が急増しています。去年の偽札の発見枚数は6,475枚と、ここ10年間で最高です(平成10年は807枚)。偽札があちこちで使われるようになりますと、お金に対する信頼が失われますから、私どもでは当然のことながら偽札対策をします。取りあえずの対策としては、市中に流通しているお札をできるだけ新しいものにすることです。古いよれよれのお札よりも真新しいお札のほうがお札の特徴がわかりやすく、本物か偽札かの区別がつきやすいので、日本銀行からせっせせっせと新しいお札をできるだけ新しいものに切替えようとしています。
抜本的な対策というのは銀行券の改刷、つまりお札を作り直すことですが、これには検討期間を含めて相当な時間がかかります。ただ、幸いなことに2000年に発行した2千円札があるので、これをできるだけ使っていただきたいと思っています。
今使われている1万円、5千円、千円のお札は1984年=昭和59年に発行したもので、発行後20年近く経過しています。発行当初は世界最高水準の偽造抵抗力を備えていたのですが、20年もたつと、パソコンやスキャナー、カラーコピー、印刷技術の急速な進歩もあってさすがに偽造抵抗力が落ちてきました。1984年当時は、これほど手軽にきれいにカラーのコピーができるようになるとは想像できませんでした。
一方、2千円札は2000年に発行されたお札で、これまでのお札にない新しい偽造防止技術が数多く搭載されています(二千円絵巻参照)。このように偽造に強いお札が広く使われるようになると、皆さんも安心してお札をやり取りできるようになります。
ただ、なかなか2000円札は流通しません。どおられないのではないかと思います。これは長年、1万円、5千円、千円の3種類で生活してきたため、頭や機械の切り替えができなかったことや、不況のせいもあって金融機関のATMやCD、自動販売機の対応もだいぶ進んできましたので、ぜひお使いいただきたいと思います。
私が2000円札を使っていただたきたいと思うのには、実は別の理由があります。ご存じのとおり、2000円札は小渕恵三さんが総理大臣のときに発行されました。沖縄サミットの年です。図柄が決まった経緯については良く知りませんが、沖縄のシンボルである「守礼の門」が描かれています。なぜ沖縄が描かれたのか。日本のシンボルであれば、世界遺産の姫路城でも安芸の宮島でも、伊勢神宮でも、あるいは皇居でもいいはずですし、そのほうが多くの人にとっては馴染みが深いのではないかと思います。それがなぜ沖縄か。確かに沖縄サミットということもあるでしょうが、小渕さんの頭の中に沖縄の歴史−本土で唯一戦場になった場所であり、現在も日本の防衛で多大の負担を負っている場所−がよぎったのではないかと思います。というより、そうであったと思いたいのです。日本では記念切手は発行しませんが、世界の国の中には記念紙幣を発行している国もあります。そういう紙幣を見ますと、歴史をきちんと評価しようという気持ちが伝わってきます。たとえばオーストラリアの建国200周年記念紙幣の裏は先住民の肖像です。私は2000円札については、歴史的建造物という控えめな表現ではありますが、小渕さんの日本の政治家として心意気を感じます。
私はできるだけ2000円札を使うようにしていますが、それは職業上偽造抵抗力の強いお札を普及させたいという気持ちと、もうひとつは森川個人として「沖縄のことは忘れていないよ」という日本人としての心意気を示したいという気持ちの二つからです。昭和20年6月6日、当時の大田海軍少将は「沖縄県民斯く戦へり。県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」と打電して自決されたわけですが「われわれは歴史を忘れない」という気持ちを示すためにも、2000円札を使っていきたいと思います。
2000円札については「必要ない」とか「自動販売機で使えないから不便だ」とか言われています。しかし、そろばん勘定を離れて日本人の心意気というものがあってもいいのではないかと思っています。機械を改造するとなるとお金がかかりますが、単に使うだけならコストはかかりません。先日佐藤知事が県民の皆さんと沖縄を訪問されました。沖縄県の稲嶺知事は子供のころ、福島に疎開されていたそうです。このようにご縁があるのであれば、なおさら本土の人間として「沖縄のことは忘れていないよ」という気持ちで、福島の人たちに2000円札をもっともっとお使いいただけたらいいな、と個人的には強く思っています。
まだ2000円札をご覧になったことがない方、金融機関で引き換えていただいても結構ですし、福島市内であれば日本銀行の窓口で2000円札に限っては両替ができますので、是非お手にとってお使いいただけたらと思います。公私両方の立場から是非よろしくお願いします。
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