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現在生命科学が急速に進歩しております。20世紀を原子力開発に象徴される物理学の時代とするなら、21世紀は生命科学と情報化の時代となるでしょう。Key Wordの第一はゲノムです。
当初2005年達成を目標として、人間のすべての遺伝子を明らかにするために米国で始められたヒトゲノム計画は、ベンチャーの参入などにより、2000年6月にほぼ完遂いたしました。すなわちこの「ヒトゲノム計画」の完了宣言を契機に、我々はポストゲノムの時代に突入したのです。21世紀を迎えたばかりの現在、生命科学・生物学もまた新たな局面を迎えています。これまで専門化、細分化されてきた生物学の各分野が、ゲノムというキーワードによって再び統合されようとしています。人間に多型があるようにがん細胞にもそれぞれ個性があります。一つの治療法(手術、薬、放射線など)でがんを消滅させることはあり得ません。近い将来、個人の遺伝子の相違すなわち多型が明らかになり、従来漠然とした概念であった疾患感受性、環境反応性などを遺伝子のレベルで定量的に表現することが可能となってきます。したがって21世紀には、これまで集団を対象としてきた医学が、個人の健康の回復・維持を目指す「個の医学」へと変わっていくでしょう。
ところで、ヒト全ゲノムの塩基配列決定は、ヒトゲノム研究の終わりではなく、新たな研究の始まりであるといえます。ポストゲノムでは、まだ機能のわかっていない遺伝子の機能を決めたり、その先のタンパク質の研究に重点が置かれることになるでしょう。すなわち、遺伝子を総合的に解析しようとする機能ゲノム学(Functional Genomics)や、細胞で発現している全タンパク質を一度に解析するプロテオミクス(Proteomics)が登場し、また、ヒトゲノム計画成功を支えたスーパーコンピューターをさらに利用した情報科学が発展し、生物情報化学(Bioinformatics)という新しい学問分野が生まれているのです。
ここ数年、日本の生命科学の実力を軽んじた欧米人や、それに同調する一部の日本人は、我が国の技術を過小評価してまいりました。我が国には、半導体、微細加工、ロボット技術などずば抜けた実力があり、このどれもが直ちにゲノム研究に応用できます。しかも我が国でもやっと官民一体となって、21世紀の主役「ゲノムビジネス・バイオビジネス」に参入していますから、悲観する必要は全くありません。21世紀は生命科学の時代であり、私たちの日常生活は一変しております。ゲノム情報によって社会に無血革命がおき、ポストゲノムの時代に突入したのです。
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