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B.夢の精神生理学
夢は主観的体験であり、そのヒトが夢をみたかどうかは、ひとえに覚醒後の陳述に依存する。
AserinskyとKleitmanが睡眠のREM期において夢をみているという報告をしてから、にわかに夢とREM期の関係が論議されるようになった。一方、NREM期にも夢をみることは知られているが、REM期に比して夢の想起は少なく、また夢の内容もいきいきした(vivid)ものが少ないという。大熊によるとREM期とNREM期の夢の想起率は、前者は73%、後者は23%である。
ところで、ただ単に夢といっても真の夢dreamか、考えごとthinkingかを一応区別する必要がある。新見と堀は「夢は感覚心像をもち、かつこれは明確で表象としてより知覚としての性格をもち、個々の心像は構成の複雑性と連続性を保ちながら相互に統一され、それ自体で一つ以上の内容をもったドラマが形成されている場合」と定義している。
(1)REM期と夢
a.REM期の長さと夢の長さ
DementとKleitmanは、5名について眼球運動開始から5分と15分後とに目ざめさせて、夢の有無とその長さを聴取したところ、5分後に目ざめさせたものは51回のうち45回はほぼ5分くらいだと答え、15分後にめざめさせた場合は60回のうち47回が正しく約15分と答えたという。このことは夢の最中にかなり正確な時間評価ができることと、REM期の長さは夢の長さとほぼ対応することを示している。
b.急速眼球運動密度REM densityと夢内容
REM期中の眼球運動の出現頻度すなわちREM densityまたは%REMsが、夢の想起率や、その内容の鮮明さ、色彩の有無など、夢の質的側面とよく対応するということがいわれている。竹尾の正常成人についての実験結果では、REM密度が高まるにつれて、複雑な夢や、色彩のついた夢が多くなるという。
(2)NREM期と夢
前述したごとくNREM期中にも夢をみることはあり、DementとKleitmanの実験でも7%と報告されている。福間もNREM期の35%において夢をみたという報告が得られたが、REM期の夢に比べて、内容を想起できないものが多く、また明断さ、複雑さ、奇異・不合理さを欠くものが多いという。
(3)夢と個人差
従来、夢をよくみるヒトとあまりみないヒトがあるということは、日常よくいわれていることであり、Freudが夢における象徴的表現から、夢の目的や内容は願望充足としての特徴があるとして、夢判断(夢解釈)Traumdeutungを創始したことは有名なことである。
(4)REM睡眠期に夢見がおきるのは?
REM睡眠期に夢が出現する神経機序(図2)は、REM期は長いNREM睡眠によって現実世界から時間的に隔離されていること、視覚性、聴覚性入力の極度の減少、抗重力筋の緊張低下による筋・関節などからの自己受容性インパルスの減少などによって、眠っている人は空間的にも外界から隔離されていて、いわば感覚遮断に近い状態にあること、しかも大脳皮質の活動水準は覚醒時より低いがこれに近い水準にあり、ある程度の精神活動が可能であること、辺縁系の活動水準がかなり高いので記憶が思考の素材として利用できること、急速眼球運動の群発に伴って視覚系に興奮が起こり視覚的記憶映像がよび出されること、などによるものと思われる。このようなREM期においては、夢みる人は、種々の外的あるいは内的刺激によって次々と想起される過去の記憶映像を素材にして、半ば自由連想のように夢のストーリーを作っていくが、REM期には大脳皮質機能がやや低下しているために、これらの記憶素材は覚醒時のように明確化され合理的に選択、配列されて論理的思考を形成するにいたらず、思考は原始的な様式をとり、観念は映像化・具体化し、論理的関連が弛緩して、夢特有の体験が出現するものと考えられる。
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